夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
(2)
私達の間に流れる、沈黙の時間ーー。
「……」
バロンは、私の問い掛けに答えない。
でも、否定もしない。
と、言う事は……。
「っ……いつから?
いつから、思い出し……」
「アカリは僕にくれないの?」
私の言葉を最後まで聞かずに、見つめ合っていた視線を机の上にある箱に映してバロンは微笑った。
「あの箱の中身が僕のじゃないなら、落ち込むよ?僕」
「ね~リディア?」と、私の質問から話を反らして、気付かないフリをしていた。
傍に、居てくれるんだ。
私の誕生日まで……。
最後の日まで、一緒に居てくれるつもりなんだね?
あえて言葉にはしない彼の優しさが、堪らなく胸を打って目の奥が熱くなってくる。
「っ……バロン以外に、あげたい人がいる訳ないじゃない」
込み上げそうな涙を抑えると、私は机の上の箱を開けてチョコレートケーキを取り出した。