夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「アカリ、ご馳走様」
「……本当に全部、食べたね」
甘いチョコレートケーキを丸々一個、15分かからずペロリ。
全く、彼の胃袋と味覚はどうなっているのだろう?
人は見かけによらない、とはよく言ったものだ。
私が苦笑いして貰ったバラを挿した花瓶を机の上に飾ると、バロンは「ん〜」と考え込むようにしながらそれを見つめる。
「……やっぱり。
花束の方が良かったかな?」
ポツリと呟かれた言葉に、私は首を横に振って微笑む。
「ううんっ。
たくさんの花束より、一輪の方がなんか特別な感じがする。
バロンが選んでくれた、たった一つだもん」
貴方が選んでくれた。
その”たった一つ”を私にくれた。
それが私にとって、どれだけすごい価値があると思う?
私の返答に「そっか」って短く言ったバロンと、顔を見合わせて微笑った。
一緒に笑顔で居られる。
それだけで、どんな寒さにも負けない位あったかくなるの。
冬のセーターにも、マフラーにも、手袋にも負けない。
心から私を温めてくれる、幸せという名の感情。