夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

大きな幸せを、望んだつもりはなかった。

こんな風にバロンといられて、こうやって一緒に微笑む事が出来たら良かった。
一日でも長く、一つでも多くバロンとの想い出が欲しかった。


……でも。
それが私にとって大きな願いであり、大きな幸せだったの……。かもね。

……
………。

バロンとの楽しいひと時は、あっという間に過ぎるものだった。


「……じゃあ、おやすみ。
アカリ、また明日ね」

「うん、また明日」

もう少し続くと思っていた、こんなやり取り。
いつものように、バロンと就寝前の挨拶を扉付近で交わしていると……。


「……アカリ様」

と、廊下側から私を呼ぶ、ローザの声。

彼女がこんな時間に私を訪れて来るなんて珍しい。
私とバロンは、顔を見合わせてローザを見た。


「ローザ?どうしたの?」

「少し、お話がございます」

そう言ったローザの表情。
それは、真剣そのもので……。

私は、きっとただ事じゃないと感じた。
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