夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
いや。
信じたくなくて、受け入れたくなくて、考えたくなかったのだ。
その場から逃げる事も、泣きわめく事も出来ずに……。
ただ私は、その場に立っていた。
「……。
そして、バロン。
今後の貴方についてなのですが……」
「!……ッ」
ローザの視線が、私から隣の彼に替わる。
彼女の口からバロンの名前が出た途端、ハッと我に返った。
その瞬間に、悟る。
……そっか。
私は、結婚する事よりも……。
バロンと離れる事が、ショックなんだ。
嫌という程、実感する。
「アカリ様の成果がアルバート様に認められれば……。当然、一緒にはいられなくなります。
その後は、如何なさいますか?」
『一緒に、いられなくなる』
何よりも辛い言葉が、まるで尖った氷の矢のように私の心に突き刺して、広がっていく。
痛いのに、冷えて、固まって……。
悲しすぎて、涙も、出ない。