夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
(3)
翌日。
曇り一つない青空が、私達の上に広がっていた。
まさに快晴と呼ぶに相応しい日。
初めて出逢った別荘付近の海を、二人で散歩。
日中とはいえまだ春が先の潮風は、私の肌をヒヤッとなぞるように吹いた。
「わ~っ。
バロン、まださっむいよ~」
「だから言ったじゃん、厚着してきなって。
……ったく」
バロンは溜め息混じりに微笑むと、自分の上着を脱いで私に羽織らせてくれる。
実はこれをやってほしくて、ワザと上着を忘れたんだよね!
計画的な行動。
今日だけ、最後に我が儘をしたかった。
思い通りの展開が嬉しくて、ニヤニヤしてしまいそうな頰を押さえて隣の彼をチラッと見上げる。
「ありがとう。バロン、寒くない?」
「平気。
アカリのくれたコレがあるからね!」
バロンは私がクリスマスにプレゼントした、手編みのマフラーと手袋を身に付けてくれていた。
そして、それに合わせるように買ったのか、今日は珍しい私服姿だ。