夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
私は立ち止まって、バロンの髪にそっと触れてみた。
すると彼も、足を止めて驚いた表情で私を見つめた。
出逢った頃よりも伸びた髪が、共に在った時間の長さと日々の輝きを、確かなものだと教えてくれる。
「……アカリ?」
「……ごめん。
あんまり綺麗だから、触りたくなった」
照れながら素直な気持ちを言うと、バロンはフッと噴き出したように微笑んだ。
私は、知る事になる。
この彼の笑顔の裏に隠された、哀しみを……。
「……。アカリなら……。
突然僕みたいな子が生まれても、たくさん愛してくれるんだろうね」
「!……え?」
髪に触れていた私の手に自分の手を重ねて、バロンが初めて自らの事を語ってくれた。
「アカリさ、クリスマスの時に言ってくれたでしょ?『生まれてきてくれて、ありがとう』って……。
正直、驚いた。
まさか、誕生日に言われると思わなかったからさ」
「!っ……12月24日?
た、誕生日……だったのっ?」
「早く言ってよ〜!」と。驚きながら言う私に、彼はクスクス笑いながら言葉を続ける。