夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「どれだけアカリの事を見てきたと思ってるの?
今更、僕の前で飾る事なんてないよ」
そう言われて、思わず表情が歪んでしまう。
バロンは歩み寄ってくると、自分の服の袖口で濡れた私の顔や髪を優しく拭いてくれる。
「僕は、ずっと自由だったよ。
アカリの傍に居たのも。
召使いになったのも。全部、僕の意志」
彼を見上げると、そこにはいつもと変わらない笑顔があった。
ーー敵わない。
そう思った瞬間。
瞳からは涙が溢れて、私の強がりを打ち砕く。
「だから、何も心配しないで?
アカリの望む通りに、僕はちゃんと自由に羽ばたくから」
「っ……」
「アカリのおかげで、やっと自分を好きになれたんだ。
もう、決して迷ったりしない。
アカリにも、そう生きてほしい」
バロンは、私がもう道を決めているのを分かってる。
私が、その道しか選べない事を分かってる。
それ故に、一緒に居られる最後の刻まで共に在る事を選んでくれていた。