夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「……。
出来ましたよ、お嬢様」
運命の日ーー。
バロンの言葉に、私は閉じていた瞳をそっと開ける。
自室に設置された目の前の大きな鏡に映るのは「本当に私?」と、問いただしたくなる程に美しくされた自分。
幼い頃憧れた、童話に出て来るお姫様のよう。
バロンが選んでくれた、花の刺繍が施された純白のドレス。
いつもは下ろしている長い黒髪は綺麗に纏め上げられ、普段は幼い自分の顔立ちがお化粧の力で……。
いや、彼のヘアメイクのおかげで大人っぽく映る。
その出来栄えは、まるで今日が結婚式と言われても不思議じゃないだろう。
「……なんか、私じゃないみたい」
嬉しいような、恥ずかしいような不思議な気持ち。
私は照れ笑いをしながら、鏡越しにバロンを見つめた。
「バロンはすごいね。魔法使いになれるよ」
その言葉に、彼は首を横に振ると胸に手を当てて軽く頭を下げる。