夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「おお!よく来てくれましたな」
男性の登場にアルバート様は更にご機嫌になると、歩み寄って握手を交わしている。
見開かれた私の瞳に映る、アルバート様と握手をしている、男性。
その男性には、見覚えがあった。
茶色の長髪に、眼鏡をかけた……。
優しそうな、男性。
「……シュウ、さん?」
口から自然と漏れた名前。
間違いない。
夢の配達人の隠れ家で会った、マスターさんの息子。シュウさんだった。
「これはこれは、アカリさん。
……いえ、お嬢様。お久し振りでございます」
シュウさんは私に気付くと、以前と変わらない穏やかな笑顔で挨拶をしてくれる。
けれど。
私は再会を喜ぶ事も、笑顔になる事も、出来ない。
ただただ困惑しかなくて、私はシュウさんを見つめながら声を震わせて尋ねた。
「ど、どうして?
何故、シュウさんが……ここに?」
「それは勿論、仕事です。
アルバート様の依頼で派遣していた、うちの問題児の契約期間が終了したので……。本日は、彼を迎えに参りました」
私の目を真っ直ぐ見ながら、ハキハキと答えるシュウさん。