夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
それは完璧なヴァロンの演技。
”バロン”という人物を、完全に創り上げて演じていたからだ。
ーーすごい!!
凄過ぎて、興奮する。
ボーッとするのに、心臓がうるさくて、胸がすごく熱い。
ヴァロンがその場に居るだけで、見ているだけで、圧倒される。
とんでもない存在感。
身体に響き渡る鼓動が「ヴァロン!ヴァロン!」と叫んでいて、今にも口から飛び出しそうだ。
すっかり夢中で、ヴァロンに釘付け状態。
すると。
その視線に気付いた彼と、私の瞳がようやく交わった。
そして、「よく、頑張ったな」とでも言うかのように、フッと微笑ってくれた。
昔と変わらない。
意地悪そうなのに、優しい笑顔。
「ッ……」
嬉しくて、嬉しくて。
ヴァロンの傍に行きたくて、堪らなくて。
私は足を踏み出そうとした。
でも……。
「ほら、ヴァロン!
ズボンのポケットに手を入れない!
服装と姿勢を正して!」
側に居るシュウさんがヴァロンに注意をすると、彼はまた不機嫌そうな表情で目を逸らしてしまった。