夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
(3)
「ご満足頂けて嬉しい限りです」
「うむ。これが約束の報酬金だ」
私の固まった心とは関係ないように、時間は進む。
信じたくない現実が、取り引きが行われている。
アルバート様が命じると黒いスーツを着た秘書らしき人物が、大量の札束を積んだカートを押して来た。
見た事もない、金額。
「……はい。確かに、約束の金額10億ですね。
今、領収書をお出しします」
シュウさんはお金を確認すると、自分の持っていた鞄から何やら取り出し、作業を始める。
ーーこれが、現在なんだ。
淡々と進む作業に、目を逸らしたくなる。
受け止めなきゃ。
と、思っても、悲しさが溢れてくる。
ヴァロンは、悪くない。
夢の配達人として、依頼主の夢を叶えただけ。
嫌いになったり、しない。
でもっ……信じたくない。
こんな再会、望んでないっ。
あの想い出の全てが……。
嘘だったなんて、思いたくないよッ!!