夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
現に、アルバート様も……。
「っ……な、なんだねっ」
口では未だ雇い主としての威厳を保とうとしているが、ヴァロンに歩み寄られ、鋭い眼差しを向けられて、体裁が悪そうに視線を逸らす。
その姿は、悪いと分かっている過ちを犯してしまい、上手く謝れない子供のよう。
ヴァロンはそんなアルバート様の変化を見逃さなかった。
一度目を閉じて深呼吸すると、さっきとは違った優しい瞳を向ける。
「こんなに使える金があるなら……。
何で孫娘が本当に幸せになる為に、その力と金を使ってやらねぇんだよ」
「……」
「何で、ギルにも……。
息子の事もちゃんと見てやらなかった?」
「!……息子を、知っているのかっ?」
お父さんの名前が出た瞬間。
アルバート様の表情がより一層変わる。
驚き見開かれたその瞳には光が灯り、ヴァロンにすがるように質問するその反応には、親が子を想う気持ちが確かに宿っていた。