夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
そんなアルバート様に、ヴァロンは告げた。
今まで誰も知らなかったお父さんの気持ち、家出をした本当の理由を……。
「あいつは、あんたや家の事を一度も悪く言わなかった。自分の父親を、尊敬してた。
家族想いの、良い父親だって……。
でも……。母親が死んで、その悲しみから逃げるように仕事に没頭するあんたを、ギルは見てて辛くなったんだ」
不器用な言葉で紡がれる真実。
いや。飾らない素直な言葉だからこそ、かもしれない。
それはゆっくりと、私達の心の中に沁み込んでいくようだった。
「もう一度あんたに心から微笑ってほしい。
そして、自分も……。昔のあんたみたいに、家族を大切にする人間で在りたい。
……ギルは、そう俺に言った」
認めてほしくて。
大好きな自分の父親に見てほしくて、必死だったお父さんの気持ち。
次第に明らかになっていく想いは、きっとアルバート様には、この場にいる誰よりも響いているに違いなかった。