夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
その笑顔は、とても男性とは思えないくらい……。
ーーううん。男とか女とか関係なく、まさに天使の微笑みと言っても過言ではなかった。
この場にいる全ての人物が、性別という壁を越えて彼に恋してしまいそうな、優しい笑顔。
そして。
彼はそのまま流し目で、私を見た。
「!っ……」
彼と目が合って、また心臓がうるさいくらいに鳴り響く。
まるで、心を射抜かれたみたい。
瞳を、彼から逸せない。
”僕を、見てて”。
そう言われた、気がして……。
私は、無意識に頷いた。
すると彼はクルッと方向転換し、警備長と向き合うように正面に立った。
「っ……生意気な若造だ。
簡単に倒せると思うなよ?」
彼の佇まいに見惚れるようにしていた警備長はハッと我に返ると、気を取り直して首や腕の骨をボキボキ鳴らし、戦闘準備を始める。
警備長は身長が190㎝もあり、体格もガッチリした大柄な男。
対する彼は、身長は決して低くはない。むしろ、長身といわれる部類であろう。
けれど細身で、警備長との体格の差は明らかだ。
ーーでも、不思議。
私は彼が負けるなんて、思わなくて……。
少しも不安が、なかったんだ。
……
…………。