夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
(5)
ーーなんだか、まだ夢みたい。
私は船の甲板の上で、柵に掴まりながら海を眺めていた。
潮風に吹かれながら、つい数時間前の事を思い出す。
ずっと私の召使いとして傍にいてくれたバロンが、実は夢の配達人のヴァロンで……。
私を連れ去って、自由にしてくれた。
しかも……。
『守ってやる。一生』
『たとえ世界中を敵に回しても、俺がなんとかしてやるからさ。
お前が心配してる事全部、引き受ける』
『お前の夢は、俺が絶対叶えてやる』
……って。
そ、それって……つまり……ッ。
ヴァロンに言われた台詞を思い出して、私は真っ赤になった顔を押さえて俯いた。
「ーーどした?また船酔いか?」
「ッひゃあ!ヴァ、ヴァロン……ッ!」
ドキンッと高鳴る鼓動。
不意を突かれて、思わず放たれた奇声と共に心臓まで口から飛び出そうだった。
いつから居たんだろう。
声を掛けれて横を見ると、柵に頬杖をついて私の顔を覗き込むヴァロンの姿。