夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「黙るのはオマエじゃ!
仕事を一方的に破棄して、そちらのお嬢さんを誘拐してきたんじゃろうっ?」
「!っ……」
ハッと、よみがえる現実。
ーーそうだ。
色々な理由があるにしろ、簡単に言えば私達はマスターさんが言う通りの立場。
誘拐、駆け落ち……。そう捉えられても、否定出来ない。
ヴァロンと一緒にいたかった。
もう、離れたくないと思った。
けど、本当にこれで良かったの?
みなさんに、迷惑をかけるんじゃ……?
「ーー誘拐犯でも何でもいい。
コイツは、俺の大事な女だ」
心に再び不安という暗闇がかかりそうになった時だ。
俯く私の肩を、グッとヴァロンが抱いた。
「馬鹿で結構。
アカリが傍に居てくれんなら、俺は何度だって馬鹿になる」
力強い言葉と優しい温もりが光になって、私を包む暗雲を消し去ってくれるの。
「っ……ヴァロン」
私も、馬鹿で単純だ。
彼の言葉に、不安が一瞬で喜びに変わる。