夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「……。
とりあえず、店出よっか?」
「っ……待って」
このままではいけない!……と。
荷物を持って立ち上がろうとするヴァロンを、私は手を握って止めた。
言わなきゃ、伝わらない。
せっかく一緒にいられるようになったのに、もう、我慢なんかしちゃダメなんだ。
そう自分に言い聞かせて、私は素直な気持ちを伝える。
「……あ、あのね。
メニュー見ても、どんな料理か分かんないの。
だから、ヴァロンに任せて……いい?」
値段に驚いたのも事実だけど。
品名を見てもその料理がどんな物なのか、私にはさっぱり分からなかった。
「や、やっぱり食べたい。
ヴァロンの好きな物、教えて?」
召使いとしての彼をずっと見てきたけど、あれは仕事の時の彼。
ヴァロンの事を、知りたい。
もっとちゃんと見たい。
そんな想いを込めて、勇気を出して見つめた。
すると、私のドキドキを吹き飛ばしてくれるかのように、彼は笑顔で応えてくれる。