夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「お守りします。
貴女様の17歳を、必ず幸せにすると約束します」

優しく力強い声を響かせながら、彼が私の右手を取って、手の甲に軽く唇を寄せた。

その言葉と仕草に、溢れそうだった涙が止まる。


彼は不思議な人。
私を驚かせたり、安心させたり、ドキドキさせたり、嬉しくさせたり……。

色んな気持ちにさせて意地悪な人だと思うのに、憎めなくて……。
私の心に暖かい”何か”をくれるの。


これは、なに?

自分の中に芽生え始めた感情に胸をキュッと締め付けられていると、唇を離した彼が私を見上げた。


「……お願いが御座います。
私に名前を、下さいませんか?」

「!……名前?」

彼の言葉にハッと私は我に返る。

そうだ。
彼は記憶喪失で……。
自分の名前すら、忘れてしまっているのだった。
< 39 / 475 >

この作品をシェア

pagetop