夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「はい、どうぞ」
綺麗な建物の最上階の角部屋。
これが、まさかのヴァロンの自宅。
扉を開けて、中に入るように促す彼に導かれて私はゆっくりと足を踏み入れた。
前回のはしゃいでいた時とは全く違う心境で玄関に上がり、廊下を遠慮がちに歩いて奥の部屋に進む。
綺麗なダイニングキッチンに、居間には立派なふかふかのソファーと、大きな窓の外は港街と海を一望出来るバルコニー。
奥には広い寝室に、アルバート様の別荘で使っていた物に劣らない大きなベッド。
ーー見間違いではない。
やっぱりここは、以前来た時に宿泊先にした部屋。
「こ、ここ……。
ヴァロンの自宅だったの?」
「ん?ああ。
俺、部屋変わるとあんま寝むれねぇからさ。あん時一時帰宅したんだよ」
今日買い物してきた荷物を片付けながら、またもやヴァロンはサラッと答える。
あ、なるほどね。
だからあの時はヴァロン熟睡してたんだ!納得~!
ーーって!違う違う!
あまりにもヴァロンの自然な態度にうっかり流されそうになりながらも、私はしっかり目の前の現実を見た。