夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
その時。
場の雰囲気を変えてくれるかのように「リンリーン!」と、玄関の方から呼び鈴が音が鳴った。
「あ、誰か来た。ちょっと待ってて」
「う、うん」
玄関へ去って行くヴァロンを見送って、私は気持ちを落ち着けようとゆっくり深呼吸をする。
私、馴染めるかな……。
これからここに住む自分が信じられない。
家具は決して多くないけど、生活に必要な物は全て揃ってる感じ。
全体的にシンプルで、部屋も綺麗に片付いてる。
男の一人暮らしの家って結構散らかってるって噂で聞いたけど、どうやら彼はああ見えて真面目なようだ。
そんな事を考えながらもう一度ゆっくり部屋を見渡していると……。
「アカリ、ちょうどシュウ来たぜ」
「!っ……えっ?」
部屋に戻ってきたヴァロンの言葉に、私は慌てながら心の中で「来ちゃったの!?」と、ツッコミを入れた。
「こんばんは、アカリさん」
「こ、こんばんは!」
まさに噂をすれば……。
せっかく家の事から話題を逸らそうと思っていたのに、まさかのシュウさんの登場に動揺を隠せない。
そんな事情をつゆ知らず。ヴァロンの背後から顔を覗かせて、相変わらず優しい表情のシュウさん。
「ところで、ヴァ ロン。
ちょうどって、何ですか?」
「あ、お前に聞きたくてさ。この家って……」
「ーーあ~ッ!!
シュウさん!無視して下さいッ!!」
ナチュラルに会話する二人を、私はあわあわしながら必死に止めたのだった。