夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「あと、これ……。
アカリさんの部屋にあった私物です。
大切な物、全部あるか確認して下さい」

シュウさんは鞄から出した物を、テーブルに次々と並べて私に見せてくれる。

お母さんの形見の宝石箱。
猫バロンの鈴。
枯れちゃうから押し花にした、ヴァロンに貰ったバラの花。

そこには、私の大切な物が全部あった。


「っ……ありがとう、ございます」

もう取りに戻れないと思っていた、私の宝物。
気になってたけど……。
悲しいけど、仕方ないって、諦めてたのに……。


「ーー私は、ヴァロンの頼みを聞いただけです。お礼は、彼に言ってあげて下さい」

瞳を潤ませて感謝の眼差しを送る私に、シュウさんが微笑みながらヴァロンにチラッと視線を向ける。


!……ヴァロン、が?
私をあの場から助け出してくれただけではなく、後の事まで考えてくれていたの?

シュウさんの言葉に、私も隣に座っている彼を見た。

ヴァロンは照れて、口元に手を当てながら顔をそっぽ向けちゃって、私を見てくれない。
けど、彼の優しさに嬉しくて笑顔がこぼれる。
< 394 / 475 >

この作品をシェア

pagetop