夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「お嬢様の好きな名前で結構です。
不便なので、決めて下さい」

考え込んでいる私に、彼はクスクス笑いながらそう言った。

確かに呼び名がないのは、この先お互いにとって不便だろう。
でも、名前とはその人を表す大切なもの。

私が名付け親でいいの、かな?と悩みつつ……。
彼ともう一度瞳を合わせた瞬間。
私にはこの名前しか浮かばなかった。


「う、ん……。
じゃあ……。バ、バロン」

「!……。バロン?」

ゴニョゴニョと照れながら呟く私に、彼が真顔で聞き返してくる。


「む、昔飼ってた……。
猫の、名前……なんだけど」

「……。猫の名前、ですか?」

猫の名前。
その由来の説明に、今までに見た事がない、なんだか複雑そうな表情を浮かべる彼。


うぅ……。
や、やっぱり……ダメかな?

バロンは昔飼ってた珍しい雄の三毛猫だった。
毛並みも瞳も綺麗で……。

なんとなく彼と、私には被って見えたから提案してみた。
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