夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「お風呂お先に。
俺、今から仕事あっからさ。アカリは風呂入ったら先に寝てて」

「!……え?」

頬に当てられた冷たいボトルとヴァロンの言葉に、私の緊張は潮が引いていくようにすぅ~っと緩む。


「……お、お仕事?出掛け、ちゃうの?」

「いや、次の仕事の資料作り。
多分、朝までかかるから気にせずゆっくり寝てて」

ヴァロンはそう言うと茫然としている私から離れて、ボトルの水を飲みながら自分の仕事机であろう場所に向かった。


ーーお仕事。

……そっか。
ヴァロンはお仕事忙しい、もんね。

拍子抜けもしたけど、やはり内心ホッとした気持ちの方が強かった。

心から安堵して、やっとソファーから立ち上がれた私はお風呂の用意を始める。


「じゃ、じゃあ。
……お風呂に、入ってくる」

「ん、ごゆっくり~。
……あ、あと。おやすみ」

準備が整った私が声をかけると、ヴァロンがこちらに顔を向けて微笑んだ。
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