夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「……ダ、ダメ?
猫と一緒じゃ、やっぱり嫌かな?」

チラチラと様子を伺っていると、さっきまでの表情が嘘のように彼はフッと微笑んで、首を横に振った。


「その名前、有り難く頂戴致します。
では、本日より私の事はバロンとお呼び下さい」

彼がもう一度、私に軽く頭を下げる。
彼の言葉と笑顔に、心からホッとした。


バロン。

バロン。

なんだか猫バロンが私の元に戻って来たみたいで嬉しくて、自分の中に芽生えた感情や、彼が一瞬見せた複雑そうな表情の事はすっかり頭から飛んでいた。
単純な私。


「ねえ!
早速私のお願い、聞いてくれる?」

ご機嫌になった私は跪いている彼の手を引いて立ち上がらせると、最初のお願いを口にする。


「二人きりの時は、”お嬢様”はやめて?
”アカリ”って……。呼んでほしいの」

普通の女の子で、居たかった。
貴方には、本当の私を見ていてほしかった。

貴方とは対等でいたいと強く思った。
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