夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
番外編 笑顔の秘密
(1)
【ヴァロン20歳】
黒いウィッグで黒髪に。黒いアイレンズで黒い瞳の容姿を変えて、俺はこの日も仕事。
世間一般的に違和感のない容姿を装い、この地方に住む者だと怪しまれないよう、本来の姿を隠して行動していた。
それは、大してすごくない任務の筈だった。
ーーなのに。
この日俺は仕事中に、初めてと言っていい位の大怪我をした。
任務の内容は、珍しい物を盗んだり捕らえたりしてそれを売る密売人からある品物を奪還する事。
簡単だった。
奪還した品物を依頼主に渡せば終わりの筈だった。
でも。
その密売人のアジトで、俺はあるものに目を奪われた。
それは狭い檻に入れられた一匹の三毛猫。
黒と薄茶と白を混ぜ合わせた毛並みの身体は、まだ小さい。
檻の中で母猫を探し求めるように「みぃ~、みぃ~」鳴いていた。
しっかり確認した訳じゃないが、恐らくコイツは雄の三毛猫。
三毛猫の雄は希少価値が高く、高値で取り引きされると聞いた事がある。
周りと違う珍しい存在は、時に自分の意志とは関係ない運命に誘《いざな》われてしまうものだ……。
黒いウィッグで黒髪に。黒いアイレンズで黒い瞳の容姿を変えて、俺はこの日も仕事。
世間一般的に違和感のない容姿を装い、この地方に住む者だと怪しまれないよう、本来の姿を隠して行動していた。
それは、大してすごくない任務の筈だった。
ーーなのに。
この日俺は仕事中に、初めてと言っていい位の大怪我をした。
任務の内容は、珍しい物を盗んだり捕らえたりしてそれを売る密売人からある品物を奪還する事。
簡単だった。
奪還した品物を依頼主に渡せば終わりの筈だった。
でも。
その密売人のアジトで、俺はあるものに目を奪われた。
それは狭い檻に入れられた一匹の三毛猫。
黒と薄茶と白を混ぜ合わせた毛並みの身体は、まだ小さい。
檻の中で母猫を探し求めるように「みぃ~、みぃ~」鳴いていた。
しっかり確認した訳じゃないが、恐らくコイツは雄の三毛猫。
三毛猫の雄は希少価値が高く、高値で取り引きされると聞いた事がある。
周りと違う珍しい存在は、時に自分の意志とは関係ない運命に誘《いざな》われてしまうものだ……。