夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
ーー忘れかけていた、記憶の断片。
何故か、思い出してしまった。
気付いたら、俺は檻を開けて三毛猫を腕に抱いていた。
その、片手で持てるくらいに小さな身体をそっと自分の胸に抱き寄せて、もう片手を添えると両手で包む。
それはきっと、幼いあの日に、この三毛猫と同じ立場だった俺が誰かにしてもらいたかった行動だったんだろう。
その時だったーー。
「そこで何をしてるッ……!!」
その声にハッとした直後に、ダァーンッ!!と響く銃声。
見廻りが来る時間をすっかり忘れていた俺は、警備に見付かって、左脚を撃たれた。
……。
あらかじめ用意していた脱出方法と決めていた脱出経路が役に立って、なんとかアジトからは抜け出した。
玉は貫通してるから、問題はない。
でも、なかなか止まらない出血。
おまけに、逃げ込んだ町は小さいから大人数で捜されたらまずい。
かと言って、何処かの家に匿ってもらうにしても……。この怪我でしかも深夜。
誰がどう見ても怪しすぎるのは一目瞭然だった。
完全に色々とミスった。
何が”最年少で白金バッジを取得した天才夢の配達人”、だよ。