夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
ズキンッズキンッと傷口から脈打つみたいな痛みを堪えながら、自分自身を心の中で叱り飛ばす。
すると俯く俺に、「みぃ~」と三毛猫が鳴いた。
上着の中に入れて胸に抱いていた三毛猫は、顔を覗かせて不安そうに見上げてくる。
綺麗な、黄緑色の瞳。
「……大丈夫。
お前だけは、なんとかしてやる」
そう言った矢先、俺の耳に届く人の足音。
密売人の奴等だ。
っ……仕方ねぇ。
狭い家と家の隙間に隠れていた俺は片方の家の窓を見付けると、静かに鍵を開けて、窓から部屋の中へ入った。
……。
薄暗い部屋。
とりあえずこの部屋に人の気配はない。
息を殺して、そのまま音を立てずに窓の下に腰を下ろす。
外の騒ぎが収まるまで時間が稼げればいい。
そう思った。
……けど、俺はすぐに気付いた。
向こうの部屋に、誰かいる気配。