夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
静かな家の中だからその人物の足音は俺の耳にハッキリと届き、近付いてくる。
……ヤバい。
こっちに、来る……っ。
いざとなったら逃げようと身構えた。
その時。
三毛猫が俺の胸元から飛び出して、床にあった木の玩具をカタンッと倒した。
「!……え?」
しまった、と思った瞬間に聞こえたのは……。
部屋の入り口から聞こえたのは、子供の声?
運良く夜風になびいたカーテンがヒラヒラと揺れて、俺の姿を少し隠す。
そのまま様子を伺っていると……。
「……みゃ~っ」
「!……。
ね、ねこ……ちゃん?」
三毛猫の鳴き声に、子供は驚いていた。
年齢とかよく分からないが、黒髪でおかっぱの、女の子。
「どうしたの?まいご?」
擦り寄る三毛猫に警戒心もなく。
身を屈めて三毛猫の頭を優しく撫でている光景を見て、危険度が低いのは明らかだった。
あの子供以外に、人の気配はない。
少し緊張が解けて身体の力を抜いた。