夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
……でも。
家の外には密売人。入った家は隠れる場所があまりにも少ない、小さな質素な家具ばかりの室内。
三毛猫を放っておいてこの場を去る、という選択肢がなかった俺にとって、見つかるのは時間の問題だった。
そして、開いている窓。部屋の中に猫。
子供ながらにおかしいと思ったんだろうな。
暫くすると、子供は恐る恐る……。
ゆっくり、もう一度。窓の方を見てきた。
「!っ……だ、だぁれ?」
窓の下に座り込む俺を見付けて、驚いた子供は大袈裟なくらいの尻餅を着いた。
……さて。
どうやって言いくるめるかな。
ガキは正直苦手だった。
どんな表情していいのかも分からない俺は、思わず睨むようにガキと目を合わせてしまった。
案の定、ガキは俺を見てビクッと跳ね上がる。怯えた表情。
……しまった。
泣かせてしまうかも知れない。
でも、上手く微笑む事なんて俺には出来ない。
すると、気まずい空気を読むように「みゃ~っ」と三毛猫が俺に駆け寄ってくる。
擦り寄ってくる三毛猫は、まるで「そんな顔じゃ駄目だよ?」と言うように見上げてきて……。
俺は心を落ち着けて、三毛猫を抱き上げると頬擦りするように顔に寄せた。