夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
優しく。
なるべく優しく……。
変に騒がれたらまずいと思い、俺は心の中でそう自分に言い聞かせて、じっと見ているガキをもう一度見た。
「……。
なぁ、そこの……お前」
「!……へ?」
俺が話し掛けると、ガキはハッとして辺りを見渡した。
「……お前だよ、お前。
チビ、お前しかいねぇだろ?」
「わ、わた……し?」
自分を指差して首を傾げるガキ。
他に誰がいんだよ?
俺は心の中でツッコミを入れた。
けれど、その行動とすっとんきょうな表情。
見ていると不思議と和む。
ーーおかしいな?
上手く言いくるめる為の言葉を考えていたのに、次の瞬間俺の口から出たのは全く違う言葉。
「……コイツ、飼ってくんねぇ?
俺、連れていけねぇからさ」
そう言って三毛猫をガキに差し出した直後。
「俺は何を言ってるんだ?!」と、自分の言葉に後悔した。
後悔と言うか……。
「こんなガキに託して大丈夫か?」と、いう不安が頭をよぎったんだ。
……でも。
そんな不安はすぐに消える。