夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
第2章 バロンとヴァロンとバロン
(1)
「……。
成る程、これは……酷い」
私の部屋に静かに響いた、彼の真に迫った呟き。
召使いになった翌日。
私が解いた課題を見て、バロンは顔を引きつらせて言った。
「教える前に、まず現時点での学力をみたい」と言われてバロンに用意された課題は、ハッキリ言って私にはちんぷんかんぷん。
半分は空欄、もう半分は頑張って解いてみたが……。
おそらくバロンの表情からして、それも間違っているのだろう。
「アカリ。
これは真面目にやって、この結果?」
「ま、真面目よ!真面目!大真面目!
……。仕方ないじゃない……。
まともに学校通ってなかったんだから……」
言い訳をするつもりはない。
けれど、私が幼い頃から母親はあまり身体が丈夫ではなかった。
決して楽ではない生活。
だから私は、13歳の頃から学校へは行かずに働き始めたのだ。
自分に出来る事は必死にやった。
おかげで家事全般は出来るし、色んな職種を経験したという肥やしはある。