夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

（２）

【ヴァロン32歳】

「ーーおい、シュウ！
次はどの仕事行けばいいんだ〜？」

夢の配達人の隠れ家。
任務から帰還した俺は毎度のこと、マスター補佐であり親友のシュウの部屋に押しかける。
気だるい口調と態度で部屋にあるソファーにドサッと座ると、ボトルに入った水を飲みながら次の任務の指示を仰いだ。


ガキと三毛猫と別れてから十年以上経った。
正直俺はこの時まで、すっかりあの日の事を忘れていた。

言い訳する訳じゃない。
三人しかいない白金バッジの夢の配達人の中でも、俺は常に人気も実力も断トツにNo. 1をキープしていて仕事量が半端なかった。

次々来る依頼に押し潰されそうになって、俺はシュウに効率のいい仕事を選んでもらう。
自分でいちいち依頼の資料に目を通してたら、ほんとそれだけで日が暮れそうだ。


「そうですね。
ヴァロン、これはどうですか？」

「待ってました！」と言わんばかりに、手慣れ様子でシュウはいつものようにテキパキと資料を俺に渡す。

そんな感じの当たり前な、お決まりのやり取り。いつもなら俺も二つ返事で「それでいい」となるんだが……。
今回ばかりは、資料を見て固まった。
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