夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「大体花嫁修業とか。ただの庶民の娘を一から教育とか……。あ〜!無理無理。
そんなかったるい仕事、やだね」
心の何処かで、シュウがあえてこの依頼をすすめて来た事に多少の違和感は感じながらも、俺はそう言ってクシャクシャにした依頼書をテーブルの上に放った。
けれど。
他の仕事を探そうと、山積みになった自分の依頼を漁りだすと……。
「依頼人、見ましたか?」
その一言で、俺の心境は一変。
シュウが隣に来て、さっき俺が握り潰した資料をもう一度開いて差し出す。
「依頼人は、アルバート様。
……。ギルさんのお父様、ですよ?」
シュウの言葉が、俺は依頼を漁る手を止めた。
依頼主が、ギルの父親のアルバート。
”ただの町娘を花嫁修業”?
まさか……。
俺の頭の中に、あの日のガキの笑顔がよみがえる。