夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
その瞬間、飛び出して止めようと思った。
でも俺は、”海に流されて記憶を失くした男”を、とっさに演じていた。
今思うと、この時すでに俺の中で依頼を引き受ける事は、心の何処かで決めていたんだ。
先に繋がる方法で、いかにさり気なく相手に近付く。
アカリの幼い頃の性格をみる限り、まず倒れた人を見過ごす筈がない。
必ず助けようとするだろう。
そして、その人物が帰る場所も分からない記憶喪失ならば……。
間違いなくアカリは俺を別荘へ連れ帰る。
そう、読んだ。
結果は思った通り。
アカリは自分の自殺を忘れ、記憶を失くしたという俺を保護した。
まあ、一つ驚いたのは……。
いきなり人口呼吸という大胆な行動に、アカリが出た事かな。