夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

俺の演技も素性も疑いもせず、アカリは幼いあの日のようにすぐ歩み寄ろうとしてくれた。

しかし。
なんの疑いも、警戒もなく部屋に入れるアカリ。
鍵まで締めるアカリ。
お風呂まで貸すアカリ。

馬鹿で助かったけど、心配になる位にお人好しだ。


……いや。
それ位、孤独だったんだろう。
誰でもいいから、傍にいてほしいと思う位に……。
今のアカリに、あの日の明るい笑顔はない。
必死に微笑もうと、してる。

何とかしてやりたくて。
俺は明るい青年のフリをして、微笑んだ。

そしたら、アカリは泣いた。

てっきり、笑顔が返ってくると思っていた俺は驚いて。
逆に瞳が逸らせなくなった。


「っ……どうしたの?アカリ?」

「っ……もっと、呼んで。
名前、もっとっ……呼んで?」

砂浜で泣きながら俺に名を呼んでくれとせがむアカリを、不思議と面倒臭いと思わなかった。

むしろ、そうしてやりたいと思った。
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