夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「あ!これ……」
バロンが召使いになって二週間。
自室の机に向かって新聞を眺めていると、私はある記事に目を奪われた。
「世間の出来事も勉強しなさい」と、彼が置いていった新聞。
「……良かった。
今も元気で、お仕事してるんだね」
新聞に白黒で映った人物を見て、私はふふっと微笑んだ。
表情も分からない後ろ姿だけど、その人物が生きているというだけで嬉しかった。
「そんなに面白い記事が御座いましたか?
アカリお嬢様?」
「!っ……バ、バロン!」
思い出に浸りながら表情をほころばせていると、いつの間にか私の背後から身を乗り出し、新聞記事を覗き込むバロンの姿が……。
ーー近いっ!
顔が近いよ〜〜っ!?
呼びかけられて顔を向けた先にあったのは、美しい彼の横顔。
あと少しで、彼の頰に私の鼻先が触れてしまいそうなくらい間近だった。