夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

カタンッ……!

「!……え?」

耳に届いた、小さな物音。
思わず顔を上げて部屋を見渡すと、ベッド脇の窓のカーテンが夜風になびいてヒラヒラと揺れていた。

お母さんが出掛ける前に閉めていった筈の窓。
それに、さっきまで遊んでいた積み木のオモチャが崩れている。


なぜ?
不思議に思う私の瞳に、積み木の陰からぴょこんと何かが現れた。


「……みゃ~っ」

「!……。
ね、ねこ……ちゃん?」

二つの三角耳をピンッと立てた、黒と薄茶と白を混ぜ合わせた毛並みの、三毛猫の子猫。

子猫の突然の登場には驚いた。
けれど、子供の私でも軽々と抱き上げられそうな位に小さな三毛猫は、人懐っこく足元に擦り寄ってくる。


……可愛い。

「どうしたの?まいご?」

あまりの愛らしさに和んだ私は、身を屈めて子猫の頭を優しく撫でた。


……でも。
ふと、幼心に思ったんだ。

猫が窓を開けられる筈がない、って。
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