夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「……もう一度、会いたいな」
そう願い続けて、十年以上の月日が流れた。
ヴァロンは変装も完璧で、仕事の度に姿を変えるから簡単に見付ける事はきっと出来ない。
本当の姿は夢の配達人の関係者か、いわゆる上流階級と呼ばれる一部のお金持ちの人しか見た事がないって聞いた。
あの家に住んでいれば、またいつか来てくれるんじゃないかとも思ってたけど……。
私はここに来てしまった。
もう会う事は、難しいのかも知れない。
「……ヴァロン」
今なら、呼べるのに……。
ちゃんと、言えるのに……。
名前を呟いて、私はポケットから銀色の小さな鈴を取り出した。
それは、猫バロンの首輪についていた鈴。
おそらくヴァロンが私の元から去る前に、猫バロンに付けてくれた鈴だった。
思い出に浸りながら、私がふとチリンッ……と、小さく鈴を鳴らした直後。
「みゃ~っ」
……と。
可愛らしい、優しい猫の鳴き声。
なんと、背後から猫バロンの鳴き声が聞こえた。