夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
遠ざかっていく彼の背中を、黙って見送る事しか出来ない私。
嵐が去ったように静まり返る空間で、悲しくても悔しくても、何も言えなかった。
「お嬢様。
本日より一週間、私がバロンに代わってお世話致します」
「……。
はい、よろしくお願いします」
ローザの言葉に、私は自分の本心を封じて従うしかなかったのだ。
……
…………。
その日からーー。
バロンはモニカ様とずっと一緒だった。
次の日も、また次の日も……。
朝モニカ様が起きてから夜眠るまで、ずっと一緒。
当然、私とバロンに二人きりの時間なんてなくて……。
モニカ様と一緒にいるバロンを私は見たくなかったから、極力避けていて……。
”一週間だけ”って、自分に言い聞かせて、私には耐える事しか出来ない毎日。
「お嬢様。
本日はこの問題集を終わらせましょう」
「はいっ」
この時の私には、ローザのスパルタな教育が逆に良かった。
余計な事を考えなくていいようにローザが出す課題を必死に熟して、バロンのいない時間を過ごした。
……
…………。