夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「良かった。
アカリがまだ起きてて……」
「ど、どうやって登ってきたのよっ?
ここ、二階なんだけどッ?!」
明るい声を弾ませて微笑むバロンに、混乱した頭で問い掛ける。
バロンに会いたかった。
けど、それよりも彼が二階のバルコニーに居た事が気になる。
悪い予想しか、出来ない。
「ああ、まずあの木を登って……。
そっからバルコニーの柵まで跳んだ」
予想的中。
”まさか”と顔を青ざめさせていた私にバロンは外を指差して、しれっと当たり前のように答えた。
彼の指の先にあるのは、二階まで伸びた高い木。
そこから柵まで距離も、ある。
私にとったら信じられない行動だ。
「っ……バカッ!
お、落ちたらっ……どうするのよッ?
もっと、自分を大切にしてよっ!」
声を震わせて、彼の胸をドンッと両手で叩いた。
バロンが怪我なんてしたら嫌。
無茶してもし何かあったら、って……。
想像しただけで怖くて怖くて、滲んだ涙が頬を伝って床に落ちる。