夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
ち、違う!そんな訳ない!
こ、これは……。
そう!きっと妹が自分の大好きなお兄ちゃんを取られた時と、同じ気持ちだよっ!!
必死に自分の中に生まれた感情を否定する。
が、心臓は鳴り止まない。
静まり返っている部屋の中に響いて、バロンに聞こえてしまうのではないかと思う程にうるさい。
「……アカリ」
バロンが、戸惑う私の名前を呼んでくれた。
でも、私は振り返る事が出来ずギュッと目を閉じる。
だって、彼はきっと困った表情してる。
顔を見るのが、怖くて怖くて仕方なかった。
今すぐこの場から消えてしまいたい。
そんな気持ちでいっぱいの私に、いつもと変わらない口調でバロンが言った。
「あと、4日だよ?
4日後アカリの傍に戻るから、もう少しだけ辛抱して?」
右手に感じる温もり。
心に響く優しい声に、勇気を出して目を開けると……。
正面に跪いて、バロンが私の右手を自分の両手で包むように握ってくれていた。