夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「これは、仕事じゃないから……。
アカリ以外には、やらないよ?」
そう言うと、彼は私の掌に自分の頬を擦り寄せる。
まるで猫が甘えてくるみたいに目を閉じて、今にもゴロゴロ喉を鳴らしそうなバロンの表情。
「……やっぱりアカリの傍がいい。
同じ我が儘を聞くなら、アカリがいい」
「っ……」
上目遣いで見つめられて、その可愛い仕草と姿に胸がときめく。
バロンは真っ赤になって固まる私を見てかクスッと微笑うと、頰を寄せていた手を今度は自分の頭に誘導した。
「……ね、褒めて?
あのお客様の相手、疲れるんだ。
僕だって、頑張ってるんだよ?」
「えっ!
あ、う……うんっ」
ハッとして頷いて、言われるままにゆっくりと頭の上に置かれた自分の手を動かすーー。
わっ、すごい……!
髪の毛、サラサラだぁ〜。
バロンの……。
いや、男性の頭なんて初めて撫でた。