夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「!……えっ?えっ?バロン?」
呆気に取られる私をよそに、バロンはその場から離れて窓からバルコニーに出ると柵に足をかけた。
「ま、待って……!」
バロンが行ってしまうーー。
追いかけて呼び止めようとしたら、バロンは左手の掌を見せるようにしてストップをかける。
そして。
部屋からバルコニーに続く窓際で立ち止まる私に「癒してくれて、ありがとね」って、笑顔で言って……。
なんと、柵から木に跳び乗って下に降りて行くのだった。
!……う、嘘でしょッ?!
彼の行動に度肝を抜かれた私が慌ててバルコニーに出ようとした直後。
コンコンッ!
「お嬢様、申し訳ありません。
もうおやすみですか?少しお話が……」
背後の扉からノックの音と、ローザの声が聞こえた。
まさかバロンは、ローザの気配を感じて帰って行ったのだろうか?
それに、柵から木に跳び移る身のこなし……。
彼は、本当に猫みたいだった。