Kissしちゃう?
 大手の会社ならほぼどこでも、文芸賞の原稿はメールの添付ファイルで送ることできるのだ。


 それにその方が僕にとってはよかった。
 

 何せ、プリンターは大事なレポートなどを印刷する以外に使いたくなかったし、貧乏暮らしだからか、紙代やインク代もなるだけ節約したいと思っていた。


 一応ケーブルでパソコンと繋いであるが、用がないまま部屋の隅に置きっぱなしにしてある。


 僕はその日、原稿を送ったことを確認して、予めメールで約束していた大学の正門前で、早紀が来るのをじっと待ち続けた。


 彼女が苺の載った可愛いケーキを買ってきてくれると言っていたのを思い出す。


 僕は寒い中、コートに包(くる)まって寒さを凌ぐ。


 辺りは十二月の末らしく大寒波が訪れていた。


 僕はブルブルと震えながら、早紀を待ち続ける。


 だが、約束の時間になっても彼女は来ない。


 一見して他学部の学生と思われる人間たちが、
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