Kissしちゃう?
“……”


 思考が停まってしまうというのは、まさにこういった場合を言うのだろう。


 そしてやっと冷静さを取り戻した僕は、看護師が言った、遺体が安置されている病院へと向かった。


 何でもバイクで跳ね飛ばされた現場にはペチャンコになったクリスマスケーキがあったらしい。


 僕は頭がおかしくなるかもしれないと思った。


 そう、あんなに愛した早紀はもうこの世にいないのだから……。


 僕は最初早足で歩いていたのだが、いつの間にか走り始めていた。


 冬場だというのに、肌に薄っすらと汗を浮かべる。


 僕が早紀の遺体に対面したのは、その日の午後一時過ぎで、天空には凍える太陽があった。
 

 病院の受付で名を名乗り、看護師から彼女の遺体が安置されている地下の霊安室へと案内された。


 僕は白い布が全身に被せられた遺体と対面し、改めて思った。
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