Kissしちゃう?
“早紀が死んじゃった”


 あまりに辛い出来事に僕は一言も言葉が出なくなる。


 そして僕はその日の昼から、早紀の遺体に付き添い、故郷から彼女の親族が来るのを待ち続けた。


 僕の目からは涙の成分がなくなってしまうかと思えるぐらい、涙が溢れ出た。


 それは紛れもなく愛おしい人をなくしたときに出る類の涙だ。


 早紀の両親が来て、遺体が葬祭場へと移され、通夜と葬儀が執り行われた。


 その席上で、僕は彼女の両親と初めて対面することになる。


 父の彰と母の千佳子は僕に向かって各々、


「芹沢君、娘と付き合ってくれてありがとう」


「ホントにありがとう。娘も天国で喜んでるわ」
 

 と言ってくれた。


 僕の涙が止まらなかったのは言うまでもない。

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