Kissしちゃう?
 そして散骨の儀式は全て終わり、僕は骨が入っていたビンに自分で書いた直筆のラブレターを入れて、沖に投げ込んだ。


 ビンが真ん丸い綺麗な放物線を描いて海の彼方へ流されていく。


 その恋文には、生前の早紀と僕が交わした愛の顛末(てんまつ)が、半ば赤裸々に書き綴ってあった。


“いつかどこかの国の子供が拾って、親に見せるだろうな”


 投げ込んだ当の僕がそう思っていたし、実際いつしかどこかの国の海岸に流れ着けば、こんな恋愛をしていた日本人もいたんだなと思われることを暗に期待しつつ……。


 僕はゆっくりと駐車場に向かい、ドアロックを解除して扉を引く。


 運転手席に座り込み、エンジンを掛けてアクセルを踏み込んだ。


 ブーン……。


 車が動き出す。


 僕は海岸を後にして、慣れない運転のまま、ハンドルを握った。


 辺りが少し暗くなり始めていて、ヘッドライトを付け、僕は極力安全運転をしようと心がけながら、車を走らせ続ける。
< 109 / 111 >

この作品をシェア

pagetop