Kissしちゃう?
「そう。今度冷やかしに行くわね」


 早紀がそう言って笑った。


 横顔はまだ眠そうだ。


 僕たちの一日が始まる。


 早紀が秋らしく、ホットコーヒーを一杯淹れてくれた。


 僕はそれを飲んで完全に目を覚まし、普段着のまま、部屋に佇む。


 早紀はパソコンを立ち上げて、キーを叩いていた。


「何打ってるの?」


「家庭教師センターに出す報告書。出来上がったらメールで送っちゃえばいいから」


 早紀が合間にもう一杯コーヒーを啜って、キーを叩き続ける。


 カツカツカツ……。


 狭い部屋にその音だけが鳴り響いた。


 そう、その日の朝は誰にも邪魔されることのない、一際静かなものだった。


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