Kissしちゃう?
 僕は一応、早紀が夜道で痴漢などに襲われないために、彼女のアパートまで送った。

 
 彼女を無事送り届け、僕たちは部屋の前で別れ別れになった。


「また明日」


「ああ。またな」


「……ちゃんとモーニングコールしてね」


「うん。とにかく今日は遅いから、風呂入ったら寝なよ」


「分かってる」
 

 僕たちは口にこそ出さないものの、互いに別れてしまうときは、寂しさを伴っていた。
 
 
 ほんのわずかだけど、切ない気持ち――、そう表現していいと思う。


「じゃあね。バイバイ」


「ああ。またね」


 僕が早紀の部屋を離れていく。


 カツカツカツ……。
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