Kissしちゃう?
 早紀も大体、同じ物を食べる。


 彼女は食が細いから、二人分頼んだら、皿を余計に一つもらって小分けし、その小分けした分は僕が食べていた。


 僕たちの新しい一日が始まろうとしている。


 その日の日本文学特講の担当教官は、僕たちのゼミの担当者でもある井原先生だった。


 井原先生は受講生が仮に五分か十分ぐらい遅刻してきても、後で申告すれば、ちゃんと出席にしてくれる。


 僕は他の教官の退屈な類の話は嫌いだったが、井原先生の文学のお話は自分に合うと思っていた。


 何せ、自分が憧れに憧れていた教授である。


 先生の文学論を聞くために、僕はこの<皆慶大学文学部>に入ったようなものだからだ。


 先生の講義だけは僕も真面目に聞いていた。


 その日どんな話が飛び出すのだろうと、僕はワクワクしながら、三食で早紀を待っていた。


 時計を見ると、午前十時前だった。
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